人材あっせんの仕事をする機関は国立人材銀行のような国立のものと、民間機関とがあります。
この場合、国立における人材の定義と民間のそれとはかなり違います。
東京の国立人材銀行は有楽町駅前の交通会館内にありますが、そこに登録している人々は真の意味での人材、つまり「相当の企業で課長以上を務めたことのある大卒者」が多いわけです年齢も、まあ、40歳以上の方々が対象となりましょう。高度技術者なら若くても人材扱いをされますが、
事務系の人材はやはりキャリアが物を言うでしょう。
一方、民間の人材あっせん機関、転職サイトや転職エージェントは、人材についての考え方も柔軟です。
技術者と経営管理者は労働省認可の対象となっていますが、現実には三〇歳前後の方々の登録者が多く、またあっせん実績も多いようです。つまり、民間あっせん機関にあっては、人材とは「将来、人材となり得る人も含む」と解釈して良いでしょう。
ですから、(うーむ、人材か!自分はどこから見ても人材とは言えないから、登録するのはおかしいな)という遠慮は無用です。どの人も自分に合う分野へ行けば、大てい人材として活躍できるわけですから。
日本マンパワー、イムカ、ケンブリッジ·リサーチ、日本リクルートセンター、等の民間あっせん会社、転職サイトは大都会集中型です。地方にはあまり進出していません。
東京、大阪、名古屋、福岡や札幌等の大都会以外、こうしたあっせん機関はほとんどできていないと思いますが、地方在住者でも「登録」はできます。
土曜休日の会社にお勤めなら、こうした機関へ登録のため地方から出て来てもいいでしょう。登録は、カードに必要事項を記入するだけ。登録料はタダ同然と言えます。
では、民間あっせん機関、転職サイト・転職エージェントはどこから収入を得るのか? それは「求人企業」です。人をあっせんして、相手企業から報酬を貰う仕組みです。ですから登録者側は金銭上の負担はしなくてよいわけです。
ただ、転職サイト・転職エージェントとしては各企業から「ウチはこんな人材が欲しい」と言われていて、その企業のために人探しをするわけです。
その企業が大企業である場合もありますが、従業員10人以下のできたてホヤホヤの企業である場合もあります。
したがって、「この会社、実に有望ですよ!」と言われても、自分が行きたくなかったら, ハッキリ「NO!」と言わなくてはいけません。
転職サイト・転職エージェントの人に悪いから、と不本意な会社へ入れば、また転職ということになってしまいます。この点は一生の重大事ゆえ意思を固く持って下さい。
なお、テスコ社(東京エグゼクティブ·サーチの略称)を初めとする人材スカウト企業もあります。
これらの会社は、目星を付けた人材を会社側の注文によってスカウトするパターンが多いわけです。
ヘッド· ハンティングと言われているように、社長や重役工場長クラスが対象です。ハイテク技術者、ある企業の生命を制する特許を持つような開発者なら30歳前後でも対象になりますが、普通は「トップ級の人材」が狙いです。
しかし、将来の社長級人材と自ら思う人は、こうした会社と知り合っておくのもいいでしょう。自ら訪れて対話してみるのも一方法でしょう。
平成六年に、元CSKの社員氏で自らこうした会社へ売り込みに行き、向うの担当者がほれ込んであっせんしてくれた、というケースがあり心に残っています。
本多信一「かしこい転職、上手な離職 – 転職探し87のポイント」からの抜粋