相談に訪れて来る人は大てい履歴書を持参して、それを示しながら話し始めます。ですから、この34年間の相談業人生で、私は数千通の履歴書を見たことになります。
そのかいあって、今では、履歴書の文字を見ただけで、その人の性格が分ります。
極端に小さな字で書かれたそれを見れば、(ハハーン、この人は気の小さな人だな。人間関係が弱いかもしれないナ)と思います。
「学歴」の項目を× ×中学卒業あたりから書かれている履歴書を見れば、この人はズボラな一面もあるな、などと思うわけです。
字の大きさが違う人、つまり同じような××学校という字が並んでいて、その学校という大きさがバラバラな人を見ると、(この人は精神不安定では……)思います。
そうして、大ていの場合、こちらの認識は当っているようです。
「あなたは気が小さい方ですね。前の会社を辞めたのも人間関係でうまく行かなかったせいでしょう」
「えーっ!? どうして分るんですか!
などと、そんな会話になりますから。
しかし、企業の人事部長、人事課長は私以上に履歴書分析のベテランです。キャリア30年の人事マン氏なら、一目、履歴書を見れば、その書き手の性格、人柄、長短所まで分ってしまうでしょう。
皆さんは受ける側の人として、この事実を知っておかなければなりません。
そうして、相手方の厳しい見方をパスするだけの履歴書を書かなくてはなりません。
そのポイントは、
- ①一字一字,大きくしっかりした字で書く
- ②文字の大きさを揃える
- ③各行の書き出しの部分をピタリと揃える
- ④省略せずに定められた通りに書く
ことでよいわけです。ひとつひとつの項目について説明してみましょう
「学歴·職歴」は言うまでもなく、正直に書かなくてはなりません。「学歴」と1行目に書いて11行目から小·中·高と書くわけです。入学と卒業をキチンと書くことです。
難しいのは職歴の書き方ですが、これは「正社員」の職歴のみを書くべきで、アルバイトについては書かなくてよいでしょう。
もちろん、アルバイト生活が二年、三年と続いた人は、その間も遊んでいたわけでない証明としてアルバイト歴を書いてもよいでしょう。
なお、人によっては正社員だった期間があっても、その会社がインチキ企業だったり1年以内の職歴だったりで、書くことが気が進まず省略してしまうことがあります。
が、正社員であれば社会保険料を給料中から控除されていてそれが社会保険庁の原本に記載されているわけです。企業側は意図的に調べたりはしませんが。正直に書くよりないのです。
ただし30前なのに、もう10社以上の転社歴がある人の場合、この短い行数の中には全てを書き込めませんから適当に省略することも止むを得ないことでしょうが。
身上書欄の「免許·資格」という部分には大ていの人が自動車免許ぐらいしか書けないものですから人によっては、車の免許のない人は空白になってしまいます。
しかし、(私もその一人ですが)このスペースが空白ですと、なにか淋しい気もしますね。そこで、「社会保険労務士を勉強中」などと書く人もいます。
正式には、この表現はおかしいわけですが、私個人としては面白いなあと思います。なお、これからの人生で履歴書を提出する機会は何度かある筈ですから、ごく簡単にやれる資格や検定の類、例えば日商簿記三級、販売士三級その他の取得をおすすめしたいところです。
「得意な学科」はあくまで学問ですから、ハメを外して”ギャンブル学“とか”麻雀学”などとは書かぬことです。
趣味やスポーツの項目ではユニークな表現をしてよいわけです。意外にこの項目を巡って、面接での質問が集中するものですから、「読書」とか「テニス」など当り前のものより、ひとひねりしたものがよいと思います。「志願動機」では、多くの人が貴社に適性があるため、とか、将来有望な企業ゆえ、等と書きます。しかし、よく考えてみるとこれはおかしな表現です。もう少し具体的に「社風に魅力を感じ」、「経営姿勢に賛同し..。…」などと書く方が効果的です。もっとも、そう書くためには、具体的に相手企業の状況を調べなければなりません。
本多信一「かしこい転職、上手な離職 – 転職探し87のポイント」からの抜粋