職業相談所は積極的に利用しよう

私のところは民間の研究所です。相談者は数多く訪れて参りますが、私一人で対応しております。相談といっても自分流のものでして、大して役立っているという自覚はないのです。また、役立ち過ぎてはいけないのです。なぜなら、人間は自分の判断でこの人生を渡って行くべき存在で,大切な1人ひとりの人生に、他人があまり介入することは好ましくないからです。この程度の相談なら、「奉仕心があり、多少は世間を知っている中高年者」であればどなたでもできる類いのものです。

さて-民間の相談所というものは,そうたくさんはないはずですが、民間の就職あっせん機関には相談資質を持った職員の方々もおられますから、行ってみるとよいでしょう。また、民間の占い師等も一種の相談者といえるでしょう。

ただ、若い男女の方々には有り勝ちなことですけれど、「先生ー、私は一体、何を仕事とすればいいでしょうか!? ズバリ教えて下さい」というような言い方はやめなくてはいけません。これは主体性の放棄です。人間は自分の人生を自分で切り拓かなくてはいけない存在ですから。したがって、相談とは、自分が進むA社はどんな業務が主か、自分のA, B, Cの選択肢のうち、客観的にみてどれが最適かというような、テーマを絞った内容をぶつけなくては意味がないものです。

なお、東京·中野にあるサンプラザの中には公的な職業相談所がありますし、職安の方々も職業知識は豊かですから相談相手になってくれるでしょう。

また、東京なら飯田橋職安の中に東京都適性検査所があります。各県にも大てい一カ所ぐらいは適性を調べてくれる機関があるはずですから、都道府県庁の労働部へ尋ねてみて下さい。

適性検査とは職業興味や性格類型,各種テストによって、その人がどんな方向に合うかを調べるものです。むろん、テスト結果はいささか、あいまいな表現で、「事務関係に向く」「事業系より営業系に合う」というような、大体のことしか分りません。ですから、自分の試みたテスト結果を郵送して来て、

「私はどの道に進めばいいのでしょうか。あなたが決めて下さい!」

という方もおられます。

しかし、むしろ私にも(ハハーン、この人は商社の企画マンが合うかな……、この人は広告代理店のデザイナーに向くぞ!)などとは分らないわけです。

つまり-適性とは大きな視野から見て「あなたは× ×系が合いそう」ということが分るぐらい、と初めから考えた方がいいでしょう。それが分るだけでも有意義ですから。

なお、若い方々は「自ら調べる」という習慣がなくて、何でも電話で聞けばよい、と考えているようですが、地上の仕事のことは、大てい図書館にある本に出ていますから、自ら勉強してみて下さい。

それから、具体的な職業について知りたいなら「その仕事の従事者」に、礼を尽して尋ねてみることです。手みやげ持参で、それぞれの道の人に会って問うてみれば、五人に一人ぐらいは教えて下さるでしょう。

また、民間にせよ公的機関にせよ。大ていの専門相談者は予約制をとっていると考えて、相手の余裕のある時間を問い合わせてから、相談に行くことです。

若い方々に有り勝ちの「今日、これから行きますから!という態度は気をつけて下さい。

「えっ?忙しいのォ、ボクも困ってんですから何とか都合をつけてください」と言われても対応できないでしょうから。世の中の常識はわきまえましょう。

本多信一「かしこい転職、上手な離職 – 転職探し87のポイント」からの抜粋

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